放射線量測定作業マニュアル  
   
  予備知識  
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   福島原発行動隊モニタリングチーム  
   
  平成24年10月  
   
   
   
   
   
   
                               
はじめに                            
  この「放射線量測定作業マニュアル」は、SVCモニタリングチームの放射線測定事業
  として、外部からの測定依頼を受けて専門家として適正な環境放射線量の測定値を
  得るために、「放射線測定に関するガイドライン」(文部科学省 H23.10.21)等に  
  基づいて定めた。  
  ここでは 予備知識として 以下の 1. 2. 5. を示します  
   
目次  
   
  1.基本事項  
   
  2.放射線の基礎  
   
  3.放射線量測定器 別紙  
   
  4.測定作業フロー 別紙  
  (1) 事前調査    
   
  (2) 計画書の作成  
   
  (3) モニタリング    
   
  (4) 報告書の作成  
   
  (5)継続的モニタリング  
   
  5.関係法令・資料 別紙  
   
   
   
                               
1.基本事項                          
   
  (1)放射線量測定作業の基本的な考え方  
  除染作業者と放射線測定作業者は分離が必要  
  除染作業実施前後で測定実施  
  住民参加の測定作業  
   
  (2)放射線量を適正に測定するためには  
  政府が定めたガイドラインに従う。  
    信頼できる測定器を用いる。  
    正しい測定方法によって測定  
   
  (3)安全対応  
  各人の連絡先、健康状態の確認  
  各人はボランティア保険加入  
  名札の装着  
  測定作業は一組二人以上とする。  
  防護着、防護具(マスク、帽子、手袋等)の装着  
  個人毎の被曝線量積算管理  
  携帯電話の持参  
  事故・災害による非常時の救急、避難、連絡網の確認  
   
  (4)教育・実習の実施  
  作業マニュアルの習得  
  実践的測定作業習得のための研修  
  当該測定器の取扱い  
  測定器の点検・校正法  
  測定対象場所の環境把握  
  空間線量率、表土・地中の線量測定  
   
                               
2.放射線の基礎                        
   
(1)原子核と放射線  
  放射線発見の歴史  
  1895年 レントゲンによるエックス線の発見      
  1896年 ベクレルがウランの放射能を発見    
  1898年 キュリー夫妻がポロニウムとラジウムを発見  
  1899年 ラザフォードがα線、β線を発見    
  1900年 ヴィラールがγ線を発見        
   
  原子  
  原子:物質の基本構成単位。大きさは0.1nm(1nmは10マイナス9乗m)  
  原子は原子核と電子から構成される。  
  原子核:原子の中心にあり陽子と中性子などで構成されている。陽子の数が  
  原子番号に等しい。大きさは原子の1万分の1、プラスの電荷をもつ。  
  電子:原子核の周囲にある軌道上に存在する軌道電子と、原子から離れて  
  移動する自由電子がある。質量は無視できるほど小さい。  
  質量 9.1×10マイナス28乗g(陽子の1840分の1)  マイナスの電荷をもつ
  質量数:陽子と中性子の数の合計、電子の質量は無視される。  
  核種:質量数で特定される原子の種類  
  同位体(同位元素)=アイソトープ:  
  陽子の数が等しく(原子番号が等しく)、質量数が異なる(中性子の数が
  異なる)核種  
  放射性同位体=ラジオアイソトープ(Radioisotope):  
  同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは放射性  
  同位体といい、時間とともに放射性壊変(崩壊)して放射線を放出する。
  例えば、放射性セシウム:Cs-137 半減期30年、 Cs-134 半減期2年  
  Cs-137の壊変は0.514MeVのエネルギーをもったβ線と0.662MeVの  
  γ線を出しBa-137になる。  
  電離:軌道電子がエネルギーを得て原子核から離れること。  
                               
                               
  壊変(崩壊)  
  放射性壊変(崩壊):不安定な放射性同位体が放射線を放出し、他の元素に  
  変化すること。  
  α壊変:α線(ヘリウムの原子核:陽子2個と中性子2個)を放出し、新たな  
  核種に変わる。  
  β壊変:β線(電子)を放出し、陽子・中性子の変換が行われる。  
  γ放射:壊変後に原子核に過剰なエネルギーが残った場合、γ線を放出し  
  安定になる反応  
   
  放射線  
  放射線:壊変の時に放出される粒子や電磁波  
  α線、β線、γ線、X線、中性子線  
  α線:α壊変の時に放出される放射線。実体はヘリウムの原子核。正の電荷  
  β線:β壊変の時に放出される放射線。実体は電子であり、電荷がプラスの  
  陽電子線とマイナスの電子線がある。  
  γ線:γ放射の時などに放出される放射線。実体は電磁波  
  X線:軌道電子の軌道が移動したときや、自由電子が減速した時に放射される
  放射線。実体は電磁波。一般的にγ線よりエネルギーが低い。  
  中性子線:核分裂の時などに放出される放射線。電気的に中性  
   
  放射線の性質  
  電離作用: 放射線が物質を透過するとき、持っているエネルギーを原子や  
  分子に与え、電子をはじき出す働き。  
  蛍光作用: 放射線などが特別な物質に当たったとき、その物質から特殊な光を
  出させる働き。この光を蛍光といい、蛍光を出す物質を蛍光物質という。  
  透過作用: 物質を通り抜ける作用がある。  
   
   
   
                               
                               
  放射線に関する単位  
  Bq(ベクレル):  
  放射性物質が放射線を出す能力を表す。  
  1Bqは、1秒間に一つの原子核が壊変することを表す。  
  Gy(グレイ):  
  放射線のエネルギーが物質や人体の組織に吸収された量を表す。  
  1Gyは1kgの物質が放射線により1jouleのエネルギーを受けることを表す
  Sv(シーベルト):  
  人体が受けた放射線による影響の度合いを表す。  
  放射線を安全に管理するための指標として用いられる。  
  cpm(シーピーエム):  
  放射線測定器で計測される放射能の強さで、1分間に計測された  
  放射線の数  
   
  放射能  
  放射能:放射線を出す能力、または単位時間に壊変する数。単位はBq  
  放射性物質:放射能をもつ(放射線を放出する)物質  
  核分裂生成物:核分裂反応の結果、生成される核種  
  半減期(物理学的半減期):放射性核種が壊変により、放射能が半分になる  
  までの時間  
  生物学的半減期:身体に入り込んだ放射性物質が身体から外に半分排出  
  するまでの時間  
   
   
   
   
   
   
   
                               
(2)放射線の人体への影響                    
   
  日常生活と放射線被曝  
  宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線  
  花崗岩や土などに含まれている放射性物質  
  食物、呼吸から体に取り込んだ放射性物質  
  自然放射線 自然から受ける放射線  
  日本では年間一人当たり平均約1.5mSvの自然放射線を受けている。  
  人工放射線 人工的に作られる放射線   
  医療(診断・治療)、農業(害虫駆除・品質改良)、工業(材料加工・厚さ計)で利用
   
  外部被曝:生体の外部に放射線源があり、体外から被曝すること。  
  内部被曝:生体の内部に放射線源があり、体内から被曝すること。  
  主に、呼吸、食物摂取から体内に入り込む。  
   
  放射線による人体への影響  
  放射線の発見以降、研究や利用による研究者や医師などの過剰な被曝や広島・
  長崎の原爆被災者の追跡調査などの積み重ねにより明らかになってきている。
  身体的影響は、急性障害、胎児発生の障害および晩発障害などに分類される。
  子孫に現れる遺伝的影響については、これまでのところ報告されていない。  
  国際放射線防護委員会(ICRP)は、一度に100mSvまで、あるいは1年間に  
  100mSvまでの放射線量を積算として受けた場合でも、線量とがんの死亡率と
  の間に比例関係があると考えて、達成できる範囲で線量を低く保つように勧告。
  低線量やゆっくりと放射線を受ける場合について、がんになる人の割合が原爆
  の放射線のように急激に受けた場合と比べて2分の1になるとしている。  
  ICRPでは、仮に蓄積で100mSvを受けたとすると、がんの通常発生率  
  (日本約30%)に0.5%加算された人ががんで亡くなる可能性があるとしている
  がんの発生原因  
  がんになる原因として喫煙、食事・食習慣、ウイルス、大気汚染のほかに放射線
  も原因の一つと考えられているので、被曝を出来るだけ少なくする。  
                               
                               
  確率的影響:低い線量でも障害の発症の可能性がある放射線障害  
  確定的影響:ある線量以上の被曝を受けると、ほぼ確実に発症する放射線障害  
  しきい値:確定的影響における障害の発症する最低の限界線量  
   
  等価線量:放射線防護の目的で使用される線量。放射線の種類により異なる  
  放射線荷重係数(γ線は1)を吸収線量(Gy)に掛けたもの。単位はSv  
  吸収線量との関係は 等価線量(Sv)=放射線荷重係数×吸収線量(Gy)  
  実効線量:放射線防護の目的で使用される線量。各臓器における確率的影響の  
  発生確率を考慮した組織荷重係数を各組織の等価線量に掛けた線量  
  実効線量(Sv)=(各組織の等価線量×組織荷重係数)の総和  
   
   
(3)放射線の防護  
  保護着、保護具の装着  
  長袖の服、帽子、マスクなどにより、体に付いたり吸い込んだりすることを防ぐ。
   
  外部被曝からの防護  
  線源を除去、遮蔽、近づかない、長時間は避ける。  
  防護の3原則  
  放射性物質から距離をとる。  
  放射線を受ける時間を短くする。  
  コンクリートなどの遮蔽構造建物の中に入る。  
   
  内部被曝からの防護  
  線量の高いところでの飲食は控える。  
  湿潤にして粉じんの発散の抑制  
  線量の高い飲食物を避ける。  
  線量の高いところで作業した後は、身体の洗浄を行う。  
   
                               
(4)放射線の管理 規制値・基準値・限度値              
 避難区域・除染地域  
  放射性物質汚染対処特別措置法(除染特措法)施行規則 (環境省 H23.12.14.)
  避難区域         除染地域              
  区域     基準:年間線量 地域     除染     基準:年間線量
  帰還困難区域 50mSv以上 除染特別地域 国のモデル事業 50mSv以上
  居住制限区域 20-50mSv未満 国が除染   20-50mSv未満
  避難指示解除準備区域     国が除染   20mSv以下
    20mSv以下 汚染状況重点調査地域       1mSv/y以上
                    市町村が除染  (0.23μSv/h)
   
 除染の実施  
  除染特措法施行規則  
  「汚染状況重点調査地域」:地表50cm-1mの高さで測定した際、0.23μSv/hを
  超える地域は除染を実施する地域とする。  
  一般住居区域で園児・児童が長時間滞在する可能性がある場所の地表  
  50cm-1mで0.23μSv/h を超える際、除染を実施する。  
   
 追加被曝線量年間1mSvの考え方  
  (環境省 H23.10,10.災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 資料) 
  追加被曝線量年間 1mSvを、1時間当たりに換算すると毎時 0.19μSvと考えられる。
  (1日のうち屋外に8時間、屋内(遮蔽効果0.4倍の木造家屋)に16時間滞在)  
  0.19μSv/h ×(8時間+0.4×16時間)×365日=年間1mSV  
  0.19μSv/h+0.04μSv/h(大地からの自然放射線分0.38mSv/y)=毎時 0.23μSv
   
 放射線被曝限度基準  
  国際放射線防護委員会 ICRP 線量限度勧告  
  平常時の一般公衆の放射線被曝年間限度 1mSv/y    
  緊急事態期:被曝の放射線防護基準値 20−100mSv/y    
  事故収束後の復旧期:1−20mSv/y          
                               
                               
 労働安全衛生法電離則による放射線業務従事者の被曝限度(厚生省 S47.9.30.)  
  放射線管理区域:1.3mSv/3ヶ月 (5mSv/y)      
  被曝限度:100mSv/5y かつ 50mSv/y        
  1300μSv/3m÷90d÷24h=0.6μSv/h  
   
 労働安全衛生法除染電離則による除染等業務従事者の被曝限度(第3条、第4条)  
  (厚生労働省 H23.12.22.)  
  男性・妊娠する可能性がないと 5年で100mSv    
  診断された女性 かつ1年で50mSv  
  女性(妊娠する可能性がある) 3ヶ月で5mSv      
  妊娠中の女性       妊娠期間中1mSv      
   
 復旧復興作業での被曝線量管理等  
  除染電離則による除染等業務従事者の被曝線量の測定方法(第5条)  
    ・ 外部被曝線量の測定について  
  平均空間線量率       線量管理等          
   2.5μSv/hを超えている区域 線量管理等必要          
              個人被曝線量積算計を装着      
   2.5μSv/h以下の区域 個人線量計による測定が好ましいが  
              代表者測定等でも差し支えない    
  ( 2.5μSv/h : 週40時間、年52週換算で、年間 5mSv)  
    ・ 内部被曝線量の測定について  
  平均空間線量率が2.5μSv/h以上の作業現場  
  高濃度汚染土壌等   高濃度汚染土壌等以外
  (50万Bq/kg を超える)   (50万Bq/kg 以下)  
  高濃度粉塵作業   3ヶ月に1回の     スクリーニングを実施  
  (10mg/m3 を超える) 内部被曝測定を実施      
  上記以外     スクリーニングを実施   スクリーニングを実施  
   
                               
5.関係法令・資料                         
詳細は legalSystemOfDepollution.htm に示されています  
(1)測定の基準  
  「環境放射線モニタリング指針」 (H20.3 原子力安全委員会)  
  「放射線測定に関するガイドライン」  
  (H23.10.21 文部科学省、日本原子力研究開発機構)  
  「除染等業務特別教育テキスト」 (H24.1 厚生労働省労働衛生課編)  
   
(2)除線電離則の内容  
  イ.放射線障害防止の基本原則  
  事業者は、汚染業務従事者の放射線被曝低減化に努めること。  
  ロ.線量の限度および測定  
   @除染等業務従事者の被曝限度(第3条、第4条)  
   A線量の測定方法(第5条)  
   B線量の測定結果の記録等(第6条)  
  ハ.除染等業務の実施に関する措置  
   @事前調査と作業計画(第7条、第8条)  
   A作業の指揮者(第9条)  
   B作業の届出(第10条)  
   C診察等(第11条)  
  二.汚染の防止  
   @粉塵の発生を抑制するための措置(第12条)  
   A廃棄物収集等の際の容器の使用(第13条)  
   B退出者や持ち出し物品の汚染検査(第14条、第15条)  
   C保護具(第16条、第17条)  
   D喫煙等の禁止(第18条)  
  ホ.特別の教育、健康診断、その他  
   @除染等業務に係る特別の教育(第19条)  
   A健康診断(第20条〜第25条)  
   Bその他(第26条〜第29条)